書庫5

□家族の肖像 毛玉×2
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ターミナルの雑踏も、何度目になると随分慣れた。

ざわつくロビーから離れ発着場付近の待合室に陣取れば多少は楽だ。人ごみがそう得意ではない土方は、最初のころ大層辟易したものだが、三歳児の息子が何もかもに興味を示してちょろちょろ歩き回るものだからそっちの方に一生懸命になっているうちにいつの間にか慣れてしまった。順応性というものは結構便利だと実感している。

大窓ひとつを境にした向こう側ではひっきりなしに宇宙船が発着している。
大気圏を航行する船と宇宙用の船はやはり色々とメンテナンスも違うものらしい。ドッグに直ぐに入れられて、チェックを受ける船がほとんどだ。宇宙帰りの船の乗務員はもれなく簡単ではあるが検疫を受けなくてはならないので、予定通りに船が入ってもこちら側に出てくるのは時間が掛かるだろう。
大体目的の船は旅客便ではないから、時刻というものは当てにならない。
船の持ち主が、大体にして時間というものに収まりきらない概念の持ち主であることであるし。

上階の展望室の方が宇宙船の発着を綺麗に見られるのだけれど、息子は何故かドッグの方が好きらしく飽きることなく大窓にぺったりくっついている。
近付きすぎて硝子を息と体温で白くしている天海のお気に入りは、眼下に見えるメンテナンスドックで火花を散らして溶接される鉄板だ。
やはり父親にそういうところは良く似ている。
坂本の好みはどちらかといえば宇宙であり、宇宙生物らしいが息子の興味はもっと幅広いらしい。

土方はベンチに腰掛けて息子を眺めながら苦笑する。

くるくるまいた天然パーマもそっくりだが、本人が気にしていないのもそっくりだ。
趣味は大分人とずれていて、今まで四人の子供を育ててきた土方にしてもその興味の対象の方向が分からない。むしろ土方の子どもの中で個性的でない子どもは居ないのだが、その中でも天海と次女のきらは群を抜いているのである。
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