書庫5

□家族の肖像-常識に対する抵抗運動
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その話を聞いた途端―――――常識という常識が、自分の頭蓋の中で激しく暴れまわるのを妙は感じた。
だって、それは、ありえないだろう。無理だ。観念の問題ではない。生理的に、無理だ。
だがどうやらその結果というものが―――――彼の右手にはしっかりと握られていて、常識の反対語を非常識というならその非常識は―――――不機嫌そうな顔をして、『母親』と妙の間で確りと自己主張をしていた。


常識に対する抵抗運動 


かぶき町は化粧を始めている。

妙がこの町で働き始めてからそろそろ四年にもなる。二十歳はもう越してしまった。今ではかぶき町の1、2を争うホステスである。店を持とうか、とも考えている。あのふざけた巫女ホステスとは今も攻防を繰り広げている。巫女なのだから巫山戯ていてもおかしくないのかもしれぬ。否―――――あれは山の名前であったか。

道場のことは、まだ諦めていない。
新八ももう二十が近い。銀時も何らかの心境の変化があったのか、ここ数年真面目に働いている。
裕福ではないが貧乏でもない。ただ忙しいらしくて、土方に中々会えないと新八から愚痴を零されていると聞いた。それでも三日に一度は泊まりに行くらしい。

正直に言えばあまり面白くないのは確かではあるが、その根を妙は知らない。
何がその不安定で不可解で落ち着かない感想を生み出しているのか、知らないことにしている。
大体どちらに妬いているのか分からない。多分あの二人が一緒に居るから、妬くのであろう。そういうことにしてしまった。

近藤のストーキングはあいも変わらず続いているが以前より酷くはなくなったし、それに付随して土方が近藤を回収しに店に顔を出すことも無くなった。だからそういえば、妙はここしばらく土方と顔を合わせていないのである。
見回りには出てきているらしいが、妙の生活は夜が主体だ。その時間は違う隊が巡察をしているらしいから矢張り顔を見ることは無い。彼は副長だから違う仕事で忙しいのかもしれなかった。
しかし世相は最近実に平和である。
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