書庫5
□家族の肖像-親子喧嘩三歳編-
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「ちーもきっと寂しいんだよ。ほら、トシが子供産んだばっかりでチビたちにかかりきりだろ」
「お兄ちゃんだと喜んではいるが、あいつも複雑なのだ。一寸くらいのわがままは許してやれ」
桂の手にはビールが三本抱えられている。
土方はこの間双子を産んで、病院から戻ってきたばかりである。一気に二人はさすがにきつかったのか今も安静を求められている。千歳のときのように出産性貧血を起こさなかっただけマシというもので、家事をやりだすのはもう少し後のことになるだろう。それでもこまごまとしたことはやっているのだけれど。
その家事にも一昨年で随分慣れた四人組である。
寂しかったら逆にひっついてくるのではないだろうかと思った高杉であったが、それ以外に千歳に対して何かした覚えは無かったので、曖昧な返事をしてビールを受け取ったのだが。
その直後。
「銀時!ほたるとるりを湯に入れるから手伝え!!」
「ヒャッホー!!待ってろ俺の天使たちィ!!」
当のトシにそう台所から呼ばれ、新米パハは短距離選手も惚れ惚れするようなダッシュをかましてあれよあれよという間に駆け去っていったのである。今計れば確実に世界新記録が出ているような速度であった。
だから、
「「…薄情者」」
残された二人はそう呟くしか無かったのだった。