書庫5

□(唐獅子)牡丹と薔薇 −白無垢−
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「本当に綺麗ですぜ、姉さん」
「誰が姉さんだ、コラ」
「今日から高杉組の姐さんじゃありませんかィ。だから姉さんであってまさァ」
「嬉しかねぇよ、この馬鹿…」

男がこんなの着ても気色悪いだけだろうと呟くととんでもない!と、化粧担当の山崎までもが力一杯否定する。最高傑作ですよー、と満足げなその頭を一発殴ってやりたいが、いかんせん着物が重くて腕が肩まで上がらない。やたら息の合った山崎と総悟のコンビネーションに不承不承沈黙するしかない土方である。

「そういえば、近藤さんは?」
「父さんなら外ですぜ。親族控え室に挨拶に回ってまさぁ」
「入ってもらえばいいだろ?」
「姐さん見たら式も始まってねぇのに大泣きしちまうんじゃねぇかなぁ…」
「絶対泣きますよね、組長。嬉しいやら寂しいやら複雑で」

全く涙もろすぎんのも困りもんでさァ、なんて話をしているが、土方は少し複雑でもあった。
近藤は養子の身ながら土方を近藤組の跡取りに、と育ててくれた大恩人なのだ。
それが他の組に―――――言いたくは無いが、格下の組に―――――男の身でありながら嫁ぐということが、情け無いのではないかとつい想像してしまうのである。
自身近藤には申し訳ないと、いっそ縁を切ってもらおうかと一度は思い詰めたほどである。
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