書庫5
□(唐獅子)牡丹と薔薇 -悪友襲撃-
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そんな退屈しきりの高杉のもとに彼らがふわりと現れたのは、入院して一週間と少しが過ぎたころである。
「高杉―――――!へまをやったにかぁーらんな!」
あっはっは、と耳につく馬鹿笑いは聞き覚えがありすぎるほどで、惰眠をむさぼっていた高杉は煩そうに眉根を寄せた。
「坂本…」
「俺もいるぞ」
両腕に色とりどりの花を抱えた長身の男がドスドスとちっとも足音を殺す気もなく入ってくると、その後ろから同じく鉢植えを持った長髪の男と、更にその後ろから苦笑しながら妻が続く。
「ヅラまでかよ…仕事はどうしたてめェら」
「ヅラじゃない桂だ。貴様が下手を踏んで入院したと聞いてな。大急ぎで駆けつけてやったのだ」
「わしはこっちの状況確認確認も兼ねちゅう」
「はっ、本当かよ?どうせこの後例のキャバクラにでもいくんだろうが」
「晋助、せっかく来てもらったのにそんな言い方しなくてもいいだろう」
トシに苦笑しつつたしなめられて、途端拗ねたような顔になる(傍目には不機嫌に見えるだけなのだが)高杉の反応は全くこの男とは思えない変わりようで、ついトシにつられて苦笑してしまう坂本と桂である。
「てき高杉は不相応な嫁をもろーたもんじゃ」
「ああ?何不愉快極まりねェこと言ってんだてめェ本当に見舞い客か。少しは労われ」
「お前なぞ労わる前に完治するだろうよ。トラックで突っ込まれたというから少しは心配したというのに、全く憎らしいほどピンピンしている」
反論するにも流石にこの格好では分が悪い。吊り下げられたギプスに包まれた骨折中のそこを軽く叩いて、あんまり大口叩くと落書きしちゃる、と笑う坂本はともかく粘着質(というと本人は怒るのだが)の桂がそんな仕返しに手を出さないはずが無い。仕方なく黙り込んだ高杉は桂に小さなサボテンを渡されてしかめっ面になる。