書庫5

□(唐獅子)牡丹と薔薇 −鮮烈−
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高杉の仕事は多岐に渡る。マトモなものなど数えるほどしかないというのが彼らしいと銀時は思う。昔からカタギな道は似合わぬ、似合わぬ男だった。

高杉組の組長となってからはそれが一層顕著になったように思うが、以前よりはずっと生き生きとしている。別人かと思うほどだ。

あの世の中をはすの構えて眺めていた高杉は、時々ふと居なくなってしまうような、そんな危うさがあった。存在感が無いというわけではない。それは過剰な
ほどあった。ただ彼は何にも執着しようとしていなかった。
今ではそんなものどこに行ったというのか、ふてぶてしいのは変わっていないけれど随分人生を楽しんでいるように思える。

(矢っ張り奥さん貰ったからかなァ)

なんて考えるのは、独り身の羨望からではない。

(だって奥さんなんてそうそう貰おうとしてもらえるものじゃないし。というか俺の奥さんはトシって決めてんだけど)

銀時の思考が隣で煙管を咥えている高杉に伝わっていたら車内で嵐が吹き荒れたことだろう。

人妻(性別は男だが)と分かっているからこそなお燃える。障害があるから燃え上がる二人の愛。
因みにトシには相手にされていないどころか冗談だと信じられている。

現在トシの旦那である高杉には迷惑極まりないとしっかりガードされてしまっていて、ボディガードという役柄ひとつ屋根の下、旦那の方には四六時中べったりだというのに折角のシチュエーションも散々邪魔をされ、あしらわれ、挙句の果てに見せ付けられるという中々に報われない状況である。

一方通行だと分かっているから余計に辛い。

「銀時、負けない!…でも涙が出ちゃう。男の子だもん…」
「何キショいこと言ってんだてめェは…」

横から間髪入れず突っ込みが入る。今日も不機嫌な件の眼帯男は奥さんに会えば一気に上機嫌という、外見に反して結構単純な精神構造をしていることを近年になって発見した。一緒になって馬鹿騒ぎして腐れ縁だとかいいつつ暴れまわったりして、一緒に居る期間は自分の方が長いのに、高杉はそんなの欠片も見せようとしなかった。

そう考えてこれでは嫉妬だと銀時は頭を抱える。
何でトシに嫉妬しなければならないのか、自分の精神構造は高杉に比べたら数倍複雑だ、きっと。
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