書庫4

□In Paradism 神性の流出
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近藤の力になってやろう。
そう口には出さずとも、山南や沖田を筆頭にそう思ってくれているのを肌身で感じ取って、近藤は泣きそうになった。
これほどまでに自分のことを、皆が考えてくれているというのにいつまでも座り込んでいるわけにはいかなかった。

「トシさんは多分、もう江戸にはいないと思いやすぜ。コレだけ洗いに洗っても、目撃証言ひとつ出てきやしねェのは監禁されているか、江戸を出たかどっちかでしょうねィ」

沖田が敢えてトシの死の可能性に言及しないかったことに近藤は気が付いていて、そうだなと言葉少なに肯定した。
トシが死んでいるとは考えたくはなかった。
実際、可能性は低いだろう。そう、それだけを近藤は頼りにして、トシを捜し求めていた。
対外的にはトシは今回の事件の重要な証人となり、犯人たちに拉致されている可能性が高いため、早急に捜索・救助しなければならないと言ってはあるが、きっと自分との関係もトシと攘夷派の大物四人との関係も知られていることだろう。
近藤はそれすらどうでもよかった。
自分がどうにかなれば、真選組はなくなるかもしれないとは考える。まだ出来立ての赤ん坊のような組織だ。自分がクビだけで終わらないというのなら、腹を切る気でいた。捜し求めてもトシがもう死んでしまっているというなら、本気だった。

沖田は張り詰めた顔の近藤を眺めて溜息をついた。
近藤の寝巻き姿を見るのは久しぶりのような気がする。元々がそう几帳面でもないずぼらな近藤が最近は隊士の中で一番早くに起きて、一番遅くに報告書をまとめてから就寝する。ここ最近の睡眠時間は、一日に三時間あるだろうか。
そうそう器用でもないくせに、と沖田はすっかりと血色の悪くなった近藤に目を細めるのだ。
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