書庫4

□In Paradism 神性の流出
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清河別邸の一件から、テロはピタリと止まってはいたが、真選組に休んでいる暇はなかった。
事件はあまりに大きかったものだから、これで犯人が挙げられないということは近藤たちには許されなかった。いっそ冤罪でもいいというほどに幕府は追い込まれている。雑魚をいくら差し出しても納得はしてもらえないだろう。
これまでの事件では主に天人が標的にされていたのだが、今回殺害されたのは全てこの国の人間である。その死体の状況は今までのどの犯行よりも凄惨というものであったから、幕府は完全に震え上がってしまったのである。

矢のような催促に晒される近藤は疲弊していたが、鋭気はさほど衰えてはいなかった。

トシは、生きている。

そう信じてほとんど休憩もすることはなく勤務についている。一時間でも多く聞き込みをすればトシの情報に生き合うかも知れない。そう信じてこまねずみのように駆け回っているのである。
沖田もいつになく熱心に働いているものだから、事件後一週間経ってもフル稼動の状況であった。だがさすがにいつまでも働き詰めでは身体のほうが先に参ってしまう。アンタがちゃんと休んでくれないと下の人間は全く休めない、と言われて近藤はしぶしぶ、半日だけ空き時間を作らされた。
それも睡眠だけで終わるのだろう。血色がよく生気に溢れていた近藤の顔は、疲労の色にくすんでいるようにも見えて、痛々しかった。
目の下に張り付いているかのように、離れない隈も濃くなっている。
そう思う沖田もどこかやつれてしまっていて、人形のような丸く滑らかな頬が少しやつれてこけている。

隊士たちはトシのことを知っている。
近藤が惚れているひとということで彼らも発奮してくれているのだ。情報召集をこれほど大々的に行ったのは警察でも初めてだろう。
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