書庫4
□In Paradism 希う声
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部屋に戻ってきた桂は、あまりに鋭い三人の視線に驚いたように体を硬直させた。それほどまでに、それぞれの目つきは恐ろしかった。
「…わざわざ待っていることもあるまい」
驚いてしまった気恥ずかしさにそう渋い顔をするものの、反応するものは居ない。隣室との間に立ちふさがる襖を三人が三人とも、ちらちらとうかがっていた。桂が先刻までいた部屋だ。今はトシが眠っている。
「トシは、どうなんだよ」
「血液検査は明日中には結果が出るということだった。麻薬などの症状は出ていないらしい」
「だったらっ!!」
淡々とした報告に勤める桂に噛み付いたのは銀時である。
「…だったら何で、あんなふうに、ラリっちまってんだよ」
「トんでるとはいいがたい症状じゃがのォ」
苛苛とこの男には珍しく、親指と親指をくっつけて坂本がそわそわとしている。本当はトシの横についていたいのだろうが、医者にと断られからは仕方なくこちらの部屋で我慢しているのだ。桂だけが入室を認められたのは、この男なら病人相手にコトを仕掛けないだろうと思われたからだろう。病人の枕元で騒ぐことはなさそうであった。