書庫4

□In Paradism 鈴鳴き
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三時間。
たったそれだけの間に何があったのだろう。

呼吸を整え、先着していた隊長の説明に従って近藤は少し前に歩いていた廊下を辿った。やはり行き着いた先のその時に通され終ぞ足を踏み入れることの出来なかった座敷は――――――さんさんたる有様になっていた。
ビニールがかけられている物体が、四つ。
あまりにズタズタにされているため、青いビニールのふちからはみ出した肉片が安っぽい電球の明かりに照らされててらりてらりとぬめっていた。

「被害者は――――――」
「全部で四名です。身元は先ほど全員判明しました」
「読み上げろィ」

沖田に促され、隊長は四名の名前をすらすらと読み上げた。清河をはじめとして、どれも幕府のうちで相当の重役についていた男たちであった。
その中にトシの名前が無いことにを確認して、近藤はやっと息をつく。どっと背に今になって大量の汗が出てきた。
改めて見ると、部屋の中には血と壊れた家調度で物凄い荒らされようである。白夜叉たちに対しては現在検問をかけていると同時に、目撃者を聞き込んでいるらしい。目下のところ、残念ながら有力情報は無かった。第一報は下女からのものであったが、討ち入りは一瞬のことで、大きな悲鳴はなかったらしい。カタ、と物が倒れる音は気になってはいたものの、客が来ている間は出入りを禁じられているし、それからすぐに人が帰る気配はしたけれど見送りも不要といわれていたため顔は目撃していないという。
ただそろそろ帰ろうとするときに、玄関口の廊下を確認して戸締りに出向いたところ、そこにポタポタと血痕があったので、慌てて家人に確認しようとしてこの惨劇に突き当たったというのである。
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