書庫4

□In Paradism 鈴鳴き
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迎えのパトカーに乗った近藤はの顔色は、頗る悪かった。
あまりの顔色に沖田が心配して、検分は自分だけでも良いのではないかと言ったのだけれど、頷くこともできなかった。トシが自分のために清河の妾になったと聞いて、頭の中はひたすら混乱と沈降を繰りかえしている。

自分に相談してくれていたら、そんなことはないと笑い飛ばしてやったら。

彼は思いとどまってくれたのだろうか。
そう思うと苦しくてならないのだ。

いや、笑い飛ばすことが分かっていたからこそ、トシは自分には何も言わなかったのだろう。そう分かっているけれど、近藤はもうそれ以上何もまともに考えられなかった。

トシは、無事なのか。

生存者は発見されていないということだった。今更行った所でトシはそこにはいないことくらい、動かない頭でも分かっている。けれど死体の中に彼がいないということを確かめなければ、息すら上手く出来ないような気がした。
閑静な住宅街の一室に、自分はつい三時間前居たはずである。
三時間前は何もなかったそこは、いまや多数のパトカーと、黄色いテープに囲まれていた。
もう真夜中だ、野次馬は少ない。封鎖されたその直前までパトカーで横付けにしてもらって、よろよろと近藤は玄関に入った。部下たちは一斉に敬礼してくれたけれど、それにとてもではないが返礼できるような状態ではなかった。
玄関口から堂々と犯人たちは出て行ったのだろうか、ポツポツと上がり框に紅いものが落ちてはチョークで囲まれてマークが付けられている。
血痕だった。
それが磨きぬかれた廊下に引きずるようにして所々踏み散らされては掠れている。
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