書庫4

□In Paradism おしまいのひ
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「トシはきっともそうそう外にも出られないんだろう。だから俺が、トシの分までお参りしてもう少し溜ったら、お守りを贈ってやるんだ」

そう、散らばっていた守り袋をいちいちちゃんと並べなおしながら近藤は言ったものだ。
あんたからのってだけできっと十分あの人の力になると思いやすけどねィ、と笑って、近藤の神社めぐりを沖田は眺めていたのであった。

「トシさん、早く治るといいですねィ」
「そうだな。その前に俺たちが頑張って、トシが安心できるようにしないといけねェな」

うん、と頷いた近藤は仕事の顔に戻っている。トシが肺病に罹って会津に養生に行ったと聞いたときは大層取り乱して落ち込んでいたものだが、二ヶ月もあれば立ち直るしこの男はそもそも、陰気な考え方自体が体に合わぬだろう。立派に復活している。
書類は頼んだぞ、と言い置いた近藤は時間を気にして廊下を忙しなく走っていく。
遠ざかっていく足音を聞きながら、ごろりと沖田は寝返りを打って――――――あの二人、添い遂げたらここに住むのかなぁ、とぼんやりとそんな未来図を思い描いた。

(近藤さんはスカーフ結ぶのが全然上達しねェからねィ…美人の奥さんに結ってもらうってのが一番ぴしっとしていいや。)

一緒に住んだらきっと毎日近藤が幸せオーラを撒き散らすし毎晩だろうから、年若い隊士たちが厳しいかな、とその年若い隊士の中でも最年少の沖田はぼんやりと思うのである。

一方暖かいながらも少し切ない想像の端で、沖田の頭は清河という単語に拒絶反応を示す。近藤はああいうけれどどうも好きになれるような男ではなかった。
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