書庫4

□In Paradism おしまいのひ
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「総悟すまん、今日は帰りが遅くなりそうだ。」

出掛けにそう、いつもより多少しっかりとスカーフを巻いている局長に声を掛けられた一番隊隊長は、悪戦苦闘していた書類の束を文机の上に放り出して、ごろんと畳に転がっては逆さまにそのひとを見上げた。

「何ですかィ、この忙しい時に女でもこさえやしたかい?トシさんがいるってのに、いけやせんぜ浮気は」
「馬鹿ァ言え、俺はトシだけだ」
「…そういうことサラって言えるって、ある意味凄いですぜ」

聞いていて頬が少し赤くなってしまった、と沖田はぱちぱちまたいて、肩を竦めるのだ。
トシがここに居ればやはり頬を少し赤くしながらも、花が綻ぶように笑ってくれるのだろう。離れていても結局バカップルっぷりは変わらないんですねィ、と中々に沖田の意見は辛辣であった。

「付き合いってやつさ。清河様に誘われてなァ。もちろん遊郭だったら、すぐに帰って来るつもりなんだが…」
「清河…ですかィ。なんでまた。あいつ、俺たちに色々文句つけてばっかりじゃねェか。何でそんな奴が今更…」
「おいおい総悟、清河様は一応俺たちの上役でもあられるんだぞ。それにここ三ヶ月出来立てといえど大分頑張ったじゃないか。清河様も俺たちのことをようやく認めて下さったのかもしれん」
「ああいうタイプは使えるだけ使ったらポイ捨てするに決まってやすぜ。…まぁどうせ早く終わってもすぐには帰ってこねェんでしょう?」

にや、と悪童のように笑った沖田に、近藤は少年のように赤面した。
近藤は口に出したりはしないが、見回りの際に時折ルートを外れては、よく神社に通っているのだという。参拝をして、守り袋を買ってくるというのがパターンだ。おかげで局長室の机の上には何色ものお守りがそろそろ山を作りそうになっている。
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