書庫4

□やさしくして、できることなら。
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「面倒なことをしてくれたね」

開口一番、清河はそう言った。
昼間の騒動のことを言っているのだろう。

「警備員一名が重傷…失った腕は戻ってこないだろう。こちらがかなりの手当てを出すことになった」
「…すみません」

コートをハンガーにかけながら、トシは俯く。
昼間の銀時の騒動があって、すぐに帰宅した清河は庭の惨状に眉根を寄せて、すぐに警察関係者と話をして警備員の増強を指示した。おかげで切り倒された椿の代わりにまたその向こう側、ひとまわり背の高い竹製の塀が取り付けられている。折角の庭の生垣の上に高い竹の頭を見つけて、監獄か、とトシは内心鬱々とした心情を抑えきれないで居る。軟禁されているも同じなのだから、檻がひとつ増えるくらいどうということはないのかもしれないが…。

「白夜叉か…君の客だったね」
「…」
「まぁ良い、君が付いていかなかったことは評価している」

どうせ自分の客のことは、清河は全て調べ上げているに違いなかった。
返事をしないトシに腹を立てる様子も無く、清河は自分のネクタイを解いている青年を暗い目で見下ろした。

「…旦那様?」
「君は何を考えている」
「…その口振りですと、旦那様は俺がここから攫われても良かったと思ってるように聞こえますが」
「実際君がこの生活で満足しているとは私も考えていないさ」

クッ、とトシの細い頤を摘み上げて清河はうっそりと笑った。ひどく加虐的な笑い方だとぼんやりとトシは思った。
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