書庫4

□In Paradism 落花
2ページ/13ページ

けれど全ての目論見が外れているというわけではない。
清河はなるほど、慎重な男だった。権謀術策の張り巡らされた中で生きていたからだろうか、トシに他の男を、自分の目の届く範囲に居る男しか近づけようとはしなかった。
攘夷志士と関係していたことは清川も知っているのだ。そんな遊女を落籍したとあれば、他のライバルに蹴落とされかねない。トシの存在は一部に限って以外はまったくの秘密にされていたが、トシは余計に家から出ることは許されなかった。時折新しい顔が見えるのを考えれば、トシを餌にして取り込める人間を派閥に取り込もうとしているのかも知れない。
どれもトシは大体顔は知っていた。遊女屋に顔を出していたトシ目当ての客のようである。
しかしそのどれもが、あまりにも早い時間に訪れるものだから、仕事の方はどうなっているかは分からないものの上手くいくはずもない。別邸にかかってくる問い合わせの電話や清河が携帯電話を鳴らす回数は増えていったが、大体は下女が取り次ぐし、コトの最中であれば清河は平然と何度鳴り続けても無視をしていた。
確かに自分に溺れさせるという点においては、トシは成功していたともいえる。
けれどそれはただそれだけであった。出世の道具にも同時に使われていることも確かだ。

清河は、攘夷志士の来襲を恐れていた。普段から用心に用心を重ねて、本邸には天人から輸入したセキュリティで固めはしていたが、トシを住まわせている別低は家自体が古く、セキュリティを組み込むと無粋なことになってしまうのだという。おかげでトシは余計に軟禁生活を強いられることになった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ