書庫4

□Yesterday,Today
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「綺麗ですねえ」
「そうか」
「トシちゃんによく似合ってるヨ」
「…そうか。」

トシは生返事を返すだけだ。
神楽と新八はどうしたのか、と顔を見合わせるのである。トシと近藤の間にまた何かあったことは、二人にも分かっていた。近藤は沖田は仕官が叶ったらしい。昨日はその報告だと言っていたが、それだけではないらしいことくらい二人とも、うきうきとして帰っていく近藤と呆れ返った沖田を見ていれば察しが付くというものだ。

しかしあんなにも近藤が浮かれているというのに、トシは何故こんなにも沈んでいるのかが分からない。

神楽がしたり顔で、

「マリッジブルーに違いないネ」

そう断言して、新八を驚かせた。

「っえ、え、それって…!!でも仕官が叶ったばっかりで、とてもそんな余裕無いんじゃ…?」
「だからネ!先がある程度決まって、目処が立ったその区切りだからトシちゃんとの関係にも道筋をつける気になったネ!!」
「そ、そうか…今まで明日もしれない身だったもんなァ…」

今まで食客ばかりを抱えて収入もろくにない道場主だった近藤が、幕府おかかえの対テロ特殊警察の、真選組の局長になる。
試験的な計画だし人員も足りているとはいえないが、しかし元農民の近藤にとってそれはまさしく破格の出世だ。それを期に一気にトシを、ということは確かに説得力があった。

「でも、大丈夫かなぁ。だって武装警察って、色々危ないだろうし…」

テロリストを取り締まるんでしょという新八の声は、トシの鼓膜をゆるくくすぐる。
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