書庫4

□In Paradism 初花
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変な感じがする、と青い顔で訴えるが、健康優良児の神楽が熱を出したことなど今まで全くなかったから、どうしていいか分からない。天人との混血はこういうときに不便だと思うトシだ。
元々が色の白い神楽の肌は、血の色さえ透けて見えるほどう青褪めている。どうやら天人の血が色濃いらしいその肌が痛々しい。多少の熱だということで、いつものように稽古をさせようと思っていたトシも、こんな具合が悪そうにされては、結局休むことを許可してしまった。
ほてほて、と歩いてくる肩に一枚着物を被せてやると、えへへ、と神楽はまだ青い顔で笑う。
大人と子供の体格差だ、当然引きずるようになる上掛けにまるまった神楽は、ほら、と布団に戻そうと伸ばしたトシの手を掴もうとして突然しゃがみこんだ。

「神楽?」
「い、た……」
「どうしたんだよ、一体…?」
「トシちゃあん…」

おなか痛いヨ、と泣きそうな声で訴える少女におろおろとしながらも、トシはその体を抱き上げてはっとする。
掛けてやった上掛けに、ツゥと少女の内腿から真っ赤なものが流れ落ちたのである。
ぼうっとそれが着物に沁みこんでいくのを見て、トシはその時が来たのだということを、どこか遠くで認識した。

「神楽…お前…」

『おんな』になったんだな。

それから先は声にはならなかった。
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