書庫3

□朱白
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山崎は嘆き悲しむというに相応しい落胆振りだった。
土方が銀時に真名を明け渡したと知った途端、銀時に襲い掛かろうとするわ、土方何泣きつくわで散々だった。
泣くほうも体力は使うが、宥める方だって体力は使う。億劫だと土方が溜息を吐かなかったのは、体力の流出が本来のレヴェルに収まったためであり―――――つまり宗は無事に子供を産んだのだった。





+++ 朱白 +++




「…人の子に、名を渡したらしいな、歳」

その宗は、縁側に腰を下ろして新八に淹れさせた茶を暢気に啜っている。
数日前に出産という大労働を終えたとは思えない元気さであった。
以前見たときはふっくらとしていた腹もすっきり元のサイズに戻っている。すっとした腰周りに厚い錦の帯、白い着物に袷は目に鮮やかな朱だった。銀色の髪を後ろに回って櫛とかしてやりながら、土方はまァな、と呟く。傍から見れば美男美女の組み合わせだが、残念ながら美女と美男の間には齢に先年以上の開きがあるのだった。

「山崎が大分落ち込んでいた」
「あァ…泣きつかれた」
「泣きつきもするさ。あれは大分汝れに入れ込んでおるよ」
「…あいつは極端なんだよ」

緋の綾紐は蒼味がかった白銀色の髪には少し似合わない。瑠璃紺の一本を懐から探り出して髪を結い上げる養い子だった青年に、宗はくつくつと喉を鳴らして違いない、と笑った。
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