書庫3

□この息を奪って
2ページ/42ページ

危険だ。
高杉の素行の悪さ―――――というよりも奔放すぎる性生活を知っているだけに、ここでこうして自業自得とはいえ仕事をさせられていても、土方が心配で仕方が無い銀時だ。
陰陽寮までやってきて牽制したにも関わらずあの式神のことは、と聞いてくる貴族役人も後を絶たず、余計銀時の神経をささくれだたせる。夜伽はなさっているのか、なんて下世話なことまで聞いてくる輩も居るのだ。
夜伽なんてさせてませんよ、むしろさせられてるんですよ、でもてめェに土方を貸し出してやるなんて冗談じゃないねなんてそのたびに銀時は心中吐き捨てた。本当は罵詈雑言を思うさま浴びせかけてやりたい。
式神といったら人形を使うこともあるが、大体元はヒトではない。それをいったら土方だってそうなのだが、喩えば銀時の使役する式神の白燕、あれなど元々は紙だ。精気の宿らぬものだからさして高位ではないが、じゃあ式神がご所望なんでしたら、あんた紙相手にヌけるんですか。とは、やはりこちらも口には出さないでおいてやった。

皮肉なことに、カンヅメにされてからの方が体調は良い。それまでいかに励んでいたかということだが、既に中毒症状を示している銀時は気が気でないことも加わって精神衛生の方がかなりよろしくない。

「帰りたい―――――…」
「これ終わるまで帰しやせんっておっさん言ってやしたぜ」

小山のような巻物(半分は沖田のものなのだが)を見上げて溜息をつくと、沖田の冷たい言葉が降ってくる。まだまだ先は長そうである。
ここ数日、土方は飢えていないだろうか。
好きということは告げたし理解されたと思うが、矢張り土方にとって情交は食事だ。絶食していることにならないだろうか。化生は自然の気を食って生きているというが、都にそんなものがあるかどうか分からない。里帰りされていたらいやだなぁ、と思う銀時だ。いや、それよりもそれにつけこんでどいつかが…。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ