書庫2

□保健室事変
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足音がしたと思った途端、スライド時のドアは凄い勢いで引かれて、それと同じくらい素早く引き直される。
デスクに足を乗せていた高杉は格好がら、反応が遅れてしまう。振り向いた時にはその少年が顔を真っ赤にして、鍵を掛けたところだった。
普段なら怒鳴りつけて放り出しているところだが(場合によってはそれ以上が出ることもあるのだが)その少年を見た途端に高杉は、反射的に頭を抱えた。何故なら、

「土方ぁああっ!!」

…廊下からもう一人、息せき切って走ってくる男の存在を正確に予見したからである。

「今度は何やらかしたんだよ、このボケが」

とりあえず机から足を下ろして、高杉が先ずしたことは、少年…土方の肩を抱いて直ぐにけたたましく揺れだしたドアから遠ざけることだった。

「煩ェ、てめェには関係ねぇだろ!」
「大有りなんだよ建付け悪くなんだろうが!」

ガン、とこちらからも一発ドアをけり付けてやったから説得力は皆無だけれど。案の定、向こう側からは誰も来ねェんだから良いだろう、という反論と共にますます揺れが激しくなったのだった。

「…今度は何やらかしたんだ」
「何もしてません」

キパリと横合いから声が上がる。
よく見れば土方は私服である。紺のパーカーにジーンズというラフな格好だったが、普段学生服ばかり見ていると新鮮だ。なるほど、今日は昼から二人で出かけていたのだろう。土曜の昼は大体そういうコースらしいが、そこでまた扉の向こうの男が何かやらかしたらしい。息を整えている土方の顔は急な運動で真っ赤だったけれど、それだけではなくしっかり怒りの形相をしている。…やはり、銀八がなにかやらかしたらしい。
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