書庫2

□二時間目の煩悩
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―――今の時間は、空き時間のはずだ。

自然と覚えてしまったスケジュールに舌打ちしたいような、泣き出したいような気分になる。
鈍い音を立てて、また震動が伝わってくる。
きつく眉根を寄せて、けれど上げた視線、一階の空き教室から、こちらを見ている男に気がつく。

零れそうになった涙に慌てて顔を伏せたら、ひときわ大きく体内をかき回された。

……見られている。

監視されている。

「……っ、ふ………」

吐き出した吐息に嗚咽のような色が混じった。

立っているのが辛い。

けれど腰を下ろした途端、きっとまたダイヤルが回されるのだ。一段階どころで済むだろうか。

座って受けていた前の授業より震動は弱くなったけれど、拷問のようなその感覚に慣れていない体は過剰に反応して、ふとした接触だけで声がこぼれそうになる。
震える膝を叱った再び見た空き教室、サングラスの下の目はにこりと笑っていた。

「…っ、う……」
「トシ、保健室に行ってきたらどうだ」

体育委員と共にハードルを出していた近藤が名簿の入ったバインダーを片手に歩み寄ってくる。

「ぁ…、でも、授業……」
「そんな具合で走ったら怪我するぞ?ほら、俺が一緒についていってやるから」
「……ぁ…ッ」

腕を軽く引かれ、一歩歩んだ瞬間ぐるりと体内に突き刺さった異物が蠢き、土方はたまらずしゃがみこんだ。
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