書庫2

□二時間目の煩悩
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少しでも熱を吐き出そうとはくりと薄く唇を開いた瞬間、ブルリと体内深部で蠢いた器具に土方はきつく目を閉じて耐えた。

膝頭に力が入らない。

体操着の上、今日はまだ暖かい日なのだけれど、きっちりとジャージを着込んだ土方は傍目には多少暑そうに見える。
体操を終えただけだというのに桜色に上気した頬だとか、こめかみにうすらと浮かんだ汗は、そのせいのように見えなくも無いけれど。

唇をきつく噛んで耐える背が小刻みに震えている。体育委員が準備をしている間、てんでばらばらに立ち話をしている中、隣に居た沖田が矢張り一番に気がついた。

「土方さん、具合悪ィんですかィ?」

見上げて来る視線にゆっくりと目を向ける、その動作すら緩慢だ。

「…別、に…」

短く返事を返す、それだけなのに喉が堪えるように震えた。まだ大した運動もしていないというのに、白い肌は色づいてしっとりと汗ばんでいる。
熱を持ったような視線を覆い隠すように半ば下ろされた目蓋。伏せられた睫毛が淡く陰影を作った。

まなじりまで紅く色づいているというのに、何も無いはずが無い。

「別にって顔じゃありやせんぜ」

腕につ、と手を伸ばすと軽く触れただけだというのに面白いほど体が震えた。
ますますきつく噛まれた唇は白くなってしまっている。早く浅い呼吸に、でも、と食い下がる沖田に土方はいいから、と首を振った。
本当は良くないけれど。

「前の授業からずっと変でしたぜ?」

そういわれるけれど、だが授業には参加しなくてはならない。
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