書庫2
□世界のひずむ音
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高杉の手は大して大きくもないというのに、土方の目元まで覆ってしまう。
手のひらの内側の長いまつげがぱちりとまたたく感触が触れた。
とりあえず入れ、と招きいれた室内はがらんとしていて、他に人はいない。
高杉は顔はいいくせにその風貌から生徒たちに恐れられているため、多少の怪我では生徒はここに寄り付かないのだ。よほど具合が悪いとき、そう土方のようにならなければ大体は放っておかれるのが分かっているからでもある。大体学校の保健室なんかにたいした薬なんてものはないし、高杉も熱心でない。
保健室に入った途端ふらついた足元に軽く眉根を寄せて高杉は土方の細い体をさっさとパイプベッドに放り込んだ。そのまま大分思考がぼんやりしていたのだろう、目蓋が下がっていくのを確認して上にブランケットをかけてやる。
「少し寝とけ」
低く呟くと、聞こえたのかわずかだが小さな頭はうなずいて、その言葉を待っていたかのように細い体からは力が抜けていく。
「……細ェ」
なんだ、この細さは。
そのままデスクには戻らず生徒の眠るパイプベッドに腰を下ろした高杉は、ブランケットを持ち上げる凹凸に目を細めた。
同い年の男子生徒からすれば、上背は足りているけれど圧倒的に幅が足りない。肋骨なんて浮き上がっているのではないかと心配になってブラッンケットの上からそっと手を置いてみると、やはり柔らかさではなくきしりと撓るような音がする。
この原因の半分くらいはきっとあの同僚と呼ぶのも嫌な男のせいだろうと、なんとなく察しはついている高杉だ。