書庫2

□侵入者
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ぱらぱらと細かな粒が引かれたラインに混じられず、硝子の表面にぱちりと弾かれ悲鳴を上げた。

人も同じだ。
閉じてしまえば何も這入ってこられない。

言葉。
感情。
そういったもの総て。


自分は閉じていない。
だが開かれてもいなかった。
ただそこに居る、それだけだ。

何にも触れない。
触れられても触れ返すことはしない。
それは閉じているのと同義だと知っていた。

知らない振りをしていられるほど愚かでもなかったし、そんなことが出来る子供の振りをしていられる程器用でもなかった。

クラスメイトとは懇意にしている。年上の幼馴染である近藤や、何故か年下の癖に同クラスになった沖田とは気の置けない、といってもいい仲である。沖田はこのところ考えていることが良く分からなくなってきて困るが。

そういう次元のことではないのだ。
誰だって知られたくないことの一つや二つを抱えている。そんな深層のまで無遠慮に踏み込んでくる人間は少ない。
友人、というラインでは届かない、深い場所にある小さな王国。幼い箱庭。

そこに這入るための門は開かれているようで開かれていない。閉じられているようで閉じられていない。
そこにふと、無邪気に触れられることは何度かあったけれど、その瞬間にぴたりと門を閉ざして土方はだだ目を瞑って知らない振りをした。何もそこに無いようなふりをしてきた。そして無意識の手が通り過ぎて何時手から、またほんの少しだけ扉を開けて、こっそりとその隙間から顔を覗かせ小さな世界から見える他の世界に目を凝らした。

そういう傍観者めいた部分が自分にあるということを、土方は随分昔に知った。
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