書庫1

□七五三編
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その子供も、あまりの光景に目を丸くしている。

こんなにもキラキラした物を目の当たりにするのは、こひじは初めてだった。いやこんな光景を見たことのある人間がどれ程居ると言うのだろう。
部屋の中を埋め尽くす着物と反物の渦!!
銀時の頭もフワフワのキラキラのモコモコだが、煌びやかさは段違いだ。なんだかずっと見ていると眼が痛くなってきそう、とこひじは、少し怖くなってこしこしと目を小さな手でこすってみたけれど、やはりその反物は夢のように消えてはくれなかった。

「ヅラァ、一体何だこれは。何をおっぱじめようってんだよ」
「ヅラではない桂だ!まったく、お前たちがそう連呼するものだから、こひじまでが俺がカツラだと思ったらどうしてくれるのだ!!」
「いいじゃねぇかよ。オヤジだってリアリティが沸くだろ。で、何だよこれは」
「そんなリアリティは要らん!!……土方はやったことがなかろうと思ってな。取り寄せたのだ」

目をしぱしぱさせているこひじを打って変わって桂は上機嫌に手招く。
こひじは首を傾げ、少しそのキラキラ部屋に足を踏み入れるのを戸惑っていたようだが、すぐに桂に足音も軽く駆け寄った。
推定七歳のわりには体格が小さいこひじは膝の上に乗せてもさして重たくはない。
姿身を前にこひじを膝の上に抱え上げた桂はうきうきと桜色の反物をするすると流して合わせだす。性別を忘れてはいないか、と心配になる高杉であった。
こひじは立派な男の子だ。桜色はないのではないだろうか、と思うもののこれがまたよく似合っているものだから困るのだ。
こひじの少女めいた容貌、真っ白い肌に薔薇色の頬、大きくくりくりとしたアーモンドアイに、女の着物は大変よく似合った。
というよりも、似合いすぎていて完全に少女にしか見えなかった。
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