書庫1

□かぶき町事変編
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だからって長袖のままの隊服に短パンではまるでコスプレだ。それとも妖しいクラブである。やたら上着の裾が長いせいで、後ろから見たらズボンの裾が見えないようになってしまっている。

また何かあるんじゃねぇかなぁ、と沖田の宣戦布告やら坂本の来訪と、最近続いた出来事を思い出して溜息をつく高杉の背中に、七つになってもひっつき癖が抜けなかったこひじはぺたりとひっつきつつまたきょとんと首をかしげる。

「どうかしたの、父上?」
「……いやも、何でもねぇよ」

いつの間にかこひじはまた誰かから色々と教え込まれているようで、寂しいんだか悔しいんだか父親二人の心境は複雑だ。誰か、なんて分かりきった話ではあるが。

漢字が喋れるようになった時、沖田がこひじに真っ先に教え込んだのが自分の呼び方である。
こひじは三歳の時の記憶をちゃんと有しているが、突然ななつになったことに対しては違和感を覚えていないらしいのだからその記憶というものもそんなにはっきりとしたものではないようだ。
脳が体に神経の具合を合わせたらしいことと、さまざまな溶液や薬品に対する免疫系統の拒否反応を抑えるための薬剤が大量投下されてここ二日間研究所で薬漬けにされていたのだから多少曖昧でも仕方がない。
そこをさっくり突いた沖田は矢張り、抜け目が無かった。
だからこひじは、沖田のことを

「兄様」もしくは「総兄様」

と呼ぶ。因みに他の人間の呼び方は前とさして変わっていない。ただし山崎は「しゃがる」から「退兄」に格上げされて嬉し泣きしていた。
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