書庫1

□かぶき町事変編
1ページ/18ページ

その少年が万事屋を訪れた時、銀時をはじめ三人は絶句した。推定七歳程度のその少年が輝くような、と頭についてもおかしくないような美少年だったせいでもある。四年前、実際の時間として三日前の愛らしい姿からすれば雰囲気は多少変わってしまっていたが、まだ柔らかそうな頬に愛嬌は多分に残り、柔らかさを孕んだ線はだがすっと通っていてその涼しげな目元を引き立てている。
かといって近付き難いような大人の彼のように冷たい貌をしているのではない。
一度ころころと笑いだせばすっとした目元がたわんで子供らしさが全身を包み込む。

彼はまだまだ子供だった。

土方の記憶はずっと先で守られているらしく、七歳になったこひじからはその片鱗も伺えなかったけれど、それは一方で高杉や桂や、近藤たちを安堵させた。



未だ甘やかしてやりたかった。



それともうひとつ、銀時たちの度肝を抜いたものがある。

こひじは特注の幹部仕様の隊服を着ていた。
三歳のころはちょこまかと動き回るこひじの膝を心配したのか、引きずりそうな裾を二回ほど折ったスラックスであった。真選組も高杉たちに劣らず心配性である。
それが七歳になり、手足がしなやかに伸びようとしている現在。

……何故か半ズボンになっていたのである。

傷ひとつ無い膝小僧が眩しい。半ズボン、といっても実際にはほとんど短パンといっていい丈だ。今まで守っていた膝を、何故やんちゃのさかりに開放するのか。

「暑いからって言ってたよ」

慌てる父親たちにきょとんとして、漢字の発音で喋れるようになったこひじは言った。そういえばもう真選組隊士たちが例のロッカー仕様になりつつある季節だ。しかし何故だかこひじの隊服は、薄手の生地が使われているだけで袖もちゃんと守られている。確かにこひじにはロッカー仕様にするよりもこちらの方が似合うだろうが…と父親たちも考え込んだものである。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ