書庫1

□きずぐち 編
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「こひじ、味大丈夫かな?」

子供の味覚は単純で、あまり味の薄いものは分からない。嫌いなものは無いと聞いているのだが土方が新八に教えているのは銀時が食べるのを想定して甘さ控えめだというから、子供には物足りないかもしれない。味にパンチが足りないアル、という神楽に対し、こひじはゆるゆると首を振っただけだった。
おいし、よ、と言うものの、あまり口が進んでいないのは多分眠たいからだ。こひじは非常に良く眠る。体力が足りていないせいもあるだろうが、元元の体とはかなり変わってしまっているから、調整している脳にでも負担がかかっているのかもしれない。そう考えると複雑な銀時だ。

「おいし、ですよ」
「うん、ならいいんだけど、こひじ、きらいって中々言わないから」

と、柔らかい顔で新八が笑う。新八にとってもこひじは弟のようなものなのだろう。あんなゴリラといつたらゴリラに失礼な姉…いや、たくましくしたたかな姉を持つと純真そものの子供はそざや可愛らしく思えるに違いない、と、ぼんやりと銀時は考えて、…その子供の呟いた次の一言にあっけなく覚醒を促された。

「嫌いなもの、本当に無いの?」

なおも聞く新八を見上げたこひじはぽふんと定春の毛皮に埋もれながら、一寸首をかしげて考え込んで…それからやおらまなじりを下げると、泣きそうな顔をして。

「…きらいは、いたいから、いや」

そう呟くように言ったのだ。
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