書庫1

□きずぐち 編
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こひじを預かることになって以来、万事屋はなんだか少し落ち着いた。
前々から荒れているだとか言うことは無かった三人組だが、定春と銀時の危ないスキンシップ(ただ単に襲われているだけだが)があるものだから、こひじを危ない目にあわせるな、こひじにやたら甘いものを食べさせるな、という双方の言いつけによって、こひじが万事屋に居る一刻ほどは、万事屋はいつもとは違う顔になった。
もちろん夕方のドラマなんてものは見せてはいけないので、ブラウン管の中では子供向けのキャラクターが跳ねている。神楽は少し不満そうだがちゃんとビデオ録画されているし、第一神楽はこひじのことをとても気にいつているから問題は起きていない。いや、神楽の酢昆布好きがこひじに感染ってしまわないかがもっぱらの銀時の心配事である。
何しろ兄と父が怖い。
天下の真選組と凶悪テロリストが1人の子供に夢中、というのもおかしいがその通りなのだ。
大勢の大人をメロメロのデロデロにしてしまった天然魔性のお子様の魔力はまんまと万事屋にも及んでおり、銀時を初め新八も神楽もこひじを見る目は酷く優しいのだ。

この子供は人を惹きつけて、そして穏やかにさせる。そんな力が有るのだと銀時は思う。

今こひじは定春に神楽と一緒にもたれかかりながら、新八に作ってもらったお菓子(元はといえば土方に教わったものだ)をかじっている。さんざ沖田や高杉に遊んでもらっているから、こひじは万事屋に来たころにはくたくたになっているのだがそれでも神楽や新八相手にぐずることも無い。全くもって良い子すぎて、…良いのだろうかと、そう銀時はいつも少し、不安になるのだ。
これでよいのだろうか、こひじはそれで良いのだろうか…そう、怖くなるのだ。

子供らしい顔も見た。良く笑う。良く遊ぶ。
だが泣かないし、怒らないし、ぐずらない。土方とは逆だ。どちらが子供だか分からないな、と銀時は今にもとろとろ眠ってしまいそうに、定春の毛皮に包まれている小さな子供を眺めて苦笑した。
だが矢張り偏っている点では同じである。
神楽にしてみれば弟が出来たような気分なのだろう。よく構っては遊んでいる。神楽の過激なスキンシップに最初ははらはらしたものの、今では加減も覚えているのか見ていて心臓に悪いと言うことは無い。万事屋の面々とは違って、こひじは丈夫とはいえないのだ。
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