書庫1

□毛玉との遭遇編
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奇妙な格好をしている。
真っ赤なコートに白いマフラーという出で立ちは鮮やかで少し目に痛い。洋装のくせに足元は裸足で、何より髪がそれはもう見事なほどにくるくると丸まっていた。

「…だァれ……?」

こしこしと目をこすりながら何とか身体を起こした子供に、驚いたのは侵入者…坂本も同じだった。
友人の住居兼仕事場にやってきたと思ったら、居たのは銀髪の天然パーマ仲間ではなく、真っ黒い髪の小さな男の子だったのだから。

「金時…の子供にしちゃあ…ああ、ほがーにこすったらいかん。目が悪うなる」
「…う」

眠たいのか、半分ほどまで下った目蓋の下から真っ黒い目で自分を見上げると小さな子供は頷いた。
可愛い。可愛いが、誰かに似ている。
真っ黒い髪、真っ白い肌、真っ赤な唇。大きなアーモンドアイは少しつりあがっていて、異人のような淡い色をした虹彩と黒曜石のような瞳孔がある。

脳裏に浮かんだ人物はたった一人だった。
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