書庫1

□毛玉との遭遇編
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急に仕事が入って、銀時が出て行ってしまった。
ソファに埋まりながら、ぼんやりとこひじは玄関を眺めている。昨日は真選組に泊まったから、今日は高杉たちが迎えにくる。一応真選組と顔をあわせないようにしないといけないという配慮から桂と高杉が迎えにくるまで時間を置くことになっている。
隠れ家から二人は銀時のところに車で次第に早足になって、桂などは最後は駆け足で息を切らせながらやってきてくれるのだが、やはりこの時間がこひじには長くて仕方がない。
銀時や新八たちが構ってくれるが、その銀時がいないのだから何をするでもなく待っているこひじは待ちくたびれてしまって、とろとろと目蓋が重くなってきているのだ。
今日も沢山沖田と山崎に遊んでもらった。体力の追いつかない幼い身体は疲れやすい。高杉たちと帰る間にもうつうつと眠りかけてしまうこともあるのだ。
久しぶりの仕事らしく、銀先はこひじを置いていくのを迷っていたが、鍵を何度も確認してから出て行ってしまった。
新八は万事屋に仕事が入るとは知らずに夕飯の買出しに行っているし、神楽は定春の散歩だ。ひとりきりでいるというのは珍しくて、そして少し、心細い。
ぽてん、とこひじはソファに転がった。僅かに甘い匂いがすると思うのは気のせいではないだろう。ここの家主は無類の甘味好きだ。銀時の匂いに少し安心しながら、とろ、目蓋が落ちていこうとしたその時、突然ガタガタと扉が鳴った。

「おーい、金時ィ、おるんじゃろー!!」

ガンガン、と終いには叩きつけるような音に、身体を預けていたソファからこひじはぼんやりと上体を起こした。突然の事態に起きなければいけないと思うのに、中々頭が起きてくれない。

「土方のところにもおらんし、高杉たちはどこに行ったがだ…?っ、よっと」

軽い掛け声と供に、カコン、と不穏な音がした。
こひじが事態についていけていない間に、どたどたと足音も大きく万事屋銀ちゃんに侵入してきたのは…こひじの知らない男だった。
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