書庫1

□お風呂をめぐる騒動編
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真選組の風呂は広い。

隊士の数が多いからだ。出来るだけ効率よく入るためだろう、脱衣所にも十分なスペースが確保されている。ここだけはこの屋敷が屯所として与えられたときには流石に足りず、増築したものである。

健康・清潔というものは大切だ。

土方も近藤は風呂好きだったし、特に土方はよく血を浴びているからだろう。隊士にもそういっていたが土方が縮んでからはものぐさがっていた隊士たちも率先して入浴するようになった。

不潔な人間は沖田がこひじに近づかせないからである。
変なところで屯所の保健に貢献しているこひじだ。

「こひじ、服脱がせてやるからこっちおいで」

今日は沖田がこひじと一緒に入浴する権利を得た。
こひじは近藤に懐いているため、近藤と一緒に入浴することが多い、次いで多いのが沖田だ。山崎ともなるとこのどちらかの御相伴に預かるしかこひじとお風呂に入る機会は無い。

「ひとりでだいじょぶだよ?」

横でもぞもぞと特注の隊服を脱ごうとしていたこひじが沖田を見上げた。見ればシャツのボタンを小さな手で悪戦苦闘しつつ半分ほども既に外している。そういえば着るときも、近藤は手出しをせずに出来るだけ一人でやらせようとしていたし、時間がかかっても一人で出来るもん、とは言わないが、つたないなりにこひじは投げ出すこともない。

構いたがりのくせに、必要以上に手をだすことをしない。矢張り近藤はひとかどの親なのだと沖田は思う。
実子は未だに一人もいないし、それどころか女性経験があるのかも怪しいところなのだが。

だから、対抗心だろうか。そうかぃ、と目を細めて笑うと、沖田は中々進まない動作を待った。
脱衣所に最近つけられたストーブの理由は、なるほどこひじのために違いない。広い空間が仇になって脱衣所は中々冷える。多分近藤が頼んだのだろう。

沖田が腰タオル一枚になるころにはようやく小さなシャツのボタンを外し終わっている。ベストもズボンも脱いでいたから後は早い。洗濯に回すかごの中に下着と靴下を入れるのを待っても沖田はこひじを抱き上げるとその小さな頭をよしよしとなでた。
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