書庫1

□撮影編
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「…う…」
「あー、小さい副長大丈夫ですよ、おじちゃんは怒ってるんじゃないんですよー」

必死で山崎が宥めるものの、一度出てしまったものは引っ込められない。どんどん潤んでいく涙を慌てて出来たばかりの隊服の裾で拭おうとして、汚しちゃ駄目だよと言われていたことを思い出したのだろう。すん、と鼻をすすって我慢しようとする光景はたいそう可愛らしいのだが、沖田の機嫌は悪くなる一方である。むしろそっちの空気にこひじが怯えているのではないかとも思えるほどの黒い空気を放出しているが、沖田の呪詛はこひじだけは避けるように自動的になっているのでそのあたりは心配ない。
変なところで器用な男である。

「てめぇ、うちの副長に何してくれんですかィ…」
「は?副長?」

事情をさっぱり知らない写真屋はオロオロするばかりだ。オロオロしていてもやっぱり顔は怖かったのだが。




近藤と沖田、山崎それとこひじで写真館に来ている。

昔一度立ち消えになったポスターの撮影をするためだ。

ポスターに出る出ないは別として他の隊士たちも付いてきたがったが、屯所を空にしそうな勢いだったので沖田の眼光により自発的な挙手の群れはなくなった。
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