書庫1

□撮影編
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こひつじこひじ おじちゃんと一緒編の続きです。) 


撮影は、警察御用達のカメラマンが行った。
人の顔を凶悪に撮るプロフェッショナルである。普段は署員がそういうものは撮るのだというが、特別善良そうな人間の写真を撮るときは呼ばれるのだという。そっち方向の腕利きであった。
だから可愛いものを普通に撮ることには慣れていなかったし、その男の顔自体が怖かったものだから、


―――――こひじが怯えた。


素ですごんでいるように見えるのだからまたいけない。
そう沖田は思った。こひじはあまり人見知りをしない子供だ。でなければいかにも危険な香りが漂っている高杉を親だなんて思うまい。それは逆に言えば、警戒心が薄いということにもなるのだが、あまり子どもに懐かれる顔立ちではない隊士たちは大喜びである。まぁ彼らが迂闊に近付こうものなら沖田のバズーカが火を噴くのだが。

そう、隊のうちにも怖い顔は居るのだ。それに怯えないで写真屋に怯える、というのはどうかと思うが、それは単に隊士たちがこひじにメロメロで近付くと反射的に相好を崩すからである。それもそれで傍目に非常に気色が悪いが、こひじは好意をもって接してくる相手には無条件に安心してしまうらしい。

だから余計にだろうか、普通にしているだけでも十二分にいかめつらしい写真屋にはたいそう怯えたのである。
相手をふてぶてしく撮ったり悪そうに撮ったりするのが仕事の人間だ。そういう対象を前にして笑うということは少なかったのだろう。顔を合わせ様、大きな目潤ませた幼児に写真屋は大層うろたえた。幼児の背後で突然殺気だった対テロ用特殊部隊の隊長にもうろたえた。
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