書庫1

□裏側の事情編
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沖田が「万事屋銀ちゃん」を訪れたのはまだ早い朝のうちだった。

沖田と銀時は面識はあるが、勿論部屋まで来たことは無い。
大体にして見回り中に何やかやと銀時とやりあうのは土方であって、沖田はつまらなそうにそれを眺めているか、土方をけしかける程度だ。直接言葉を交わした記憶も少ない。

その隣にいつもいたはずのニコチン中毒の人間は何故か居ない。
玄関を開けたすぐそこに立っていた沖田に銀時が寝ぼけた頭で「多串君は?」と聞いたのはそういうわけだった。

「その多串君について、旦那に聞きてぇことがあるんでさァ」

瞬いていたネオンが消えてしんと静まり返る夜街の朝。
人気も少ない朝方は、表情をあくまでも崩すことの無い幼さの残る顔を薄らと朝焼けに染めた。
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