書庫1
□おでかけ編
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「いや、それ勉強つーか刷り込みじゃねぇのかよ」
「当然だ。こひじは俺が立派な攘夷志士にする」
「ぢゅらとおさま、ジョウイシシてなんですか?」
「この国を腐敗させる元凶たる天人を追い払って正しい国を取り戻す先駈けとなるものたちのことだよ」
「むぢかしです」
「幼児にあんまりカタいこと教えんな、ヅラ」
間髪いれずに戻ってきた反応に高杉は笑った。
三歳児は勿論、桂のペースでは十歳児でもないようを理解できるか分からない。真剣なのは結構だが空回りもいいところだ。
「…どうした?こひじ」
高杉を見つけるとすぐに抱きついてくるこひじが大人しい。文机の向こう側でじっと座ったままだ。
頭をくしゃりと撫でてやると、困ったように眉尻を下げて高杉を見上げてくる。
「……あしが、しびしびです」
「…ヅラ、やっぱ健康的じゃねぇぞ」
小さな足の裏をつついてやるときゃあ、と声を上げて畳の上にころりと転がる。足の感覚が無いらしい。
「どうしてですか?」
不思議そうに足をふらふらさせているこひじを抱え上げて、高杉は溜息をついたのだった。