書庫1
□ヅラパパ奮闘編
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「しかしお前が拾ってきたんだぞ。昨晩酔っ払ってシャツ一枚のこひじを抱えてきたと思ったら、『土方だ』とだけ言って潰れおって」
だからこひじにしたんだ。何故か胸を張る桂にがくりと高杉は肩を落とした。未成年者略取をやらかしたのは自分だったらしい。
「まぁ、土方が女に産ませたかもしれんだろう。玄人女とて失敗もする。土方の年ならありえん話でもない」
「あいつがそんなヘマやらかすかねぇ…」
「半分くらい私情が入ってないか?」
「うるせぇヅラ。俺はそこまで度量の狭い男じゃねェよ」
「ヅラじゃないといっているというに…」
隣で吐かれた吐息を高杉はいっそ潔いほど無視をする。
いつもの会話だ。
けれど現実はまったくいつもどおりのものではない。いつもよりも少しだけ真剣で、それ以上にずっとほのぼのしている。子供を公園で遊ばせる親の会話はいつもこんな雰囲気なのだろうか。
少しだけ真剣で、ずっと穏やか。
土方の産ませた子供ではないと絶対には言い切れないが、それでもその線は薄いように高杉には思える。
土方はどうも自身を嫌っているようだからだ。一度無理やり飲ませて前後不覚にした時に、
『このガイキチの遺伝子だけは残さねぇ』
そう言っていた。