書庫1

□ヅラパパ奮闘編
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こひじが庭で遊んでいる。

ひどく小さい。
同じ生物なのかと高杉は改めて最初にこひじを抱え上げたときそう思った。自分にも同じくらいのころがあったはずなのだが覚えていないのでなんともいえない。
大体そんなころに自分観察が出来るわけがないので、きっと幼児とはこういうものなのだろう。そう高杉は納得することにした。

 桂がこひじと呼んだ幼児は庭でトンボを追いかけている。
てて、と歩くたびに小さな足音がした。小さい子供は足音も小さいのだろうか。そんな他愛もないことを思う。

とおさま、とこひじに呼ばれた高杉は桂と並んで縁側で茶をすすっていた。全く平和な休日の午後の様相なわけで、高い生垣から人が家のうちを覗いたとして手配犯ふたりだと気付くかは分からない。

幼児というのも便利なものであった。

「……何で『こひじ』なんだよ」
嫌な予感がしたが一応聞いてみることにする高杉である。着物の袷を此れでもかと開いたいつもの格好は隣の桂と比べると粋ではあるが少々怠惰にも映る。とおさま、とは普段間違ってもに呼ばれないだろう男だ。
対照的に上品に両手で湯のみを捧げ持った桂は澄ました顔で、

「子供の土方、もしくは小さい土方だからだ」

矢張り高杉が予期したように、マトモな顔でマトモでないことを言った。

「土方と決まったわけじゃねぇだろうがよ…」
決まったどころかはっきり言って身元不明の幼児である。思い切り未成年者略取だ。確かに特徴は土方を良く捉えていたが、だからといって土方はそう簡単に背丈を縮ませるような特技も持っていないし、女でもない。
女だったとしても知り合って三ヶ月も経っていないのに約三歳の子供が生まれてたまるか。

夫でもないのにそういう思考が違和感なく脳内をめぐるあたり高杉の調子も桂に続いて相当投げやり気味・狂い気味である。
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