書庫5
□家族の肖像 毛玉×2
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「ちちずるい!あまみも!!あまみもははにちゅーする!」
「あっはっは、おんしにゃまだ早い!我慢しちょき」
おんしはほっぺたじゃー、と坂本に抱えられた天海が微妙に不満そうながら、チュ、と頬に小さなキスを落としていったので、土方は呆れるやらおかしいやらでくすくす笑うのだ。
「お前たちそっくりすぎだ…辰馬、あんまり変なこと教えんな」
「なきじゃ?とと親とまま親が仲がえいがは家庭円満の秘訣ろー」
「ろー!」
「…後で他のやつらがまた騒ぐな、こりゃ」
いつの間にか坂本の腕から更によじ登り、肩車に収まった天海が真似をしたものだから、土方は肩を竦めるしかない。家を開ける時間が長いからだろうか、帰って来ると反動で子どもたちに構い倒される(と、いうのだろうか)坂本はそのたびに土佐弁を残していくものだから、他の父親たちが相当やきもきするのである。
すっと大きな手を差し出されて、土方は素直に自分も真っ白い手を伸ばした。
肩車のままゆっくり雑踏に埋められた通路を歩いていく内、元々半分眠り掛けていた天海ははしゃぎ疲れていたのだろう。うとうとと眠ってしまったから坂本もおんぶに切り替える。
「…こんな煩いのによく眠れるな」
「はは、寝る子は育ついうき」
「お前みたいになんのかな、天海は。こんなに似てるんだから、きっとなるよな。」
そのほうがいいな、と手を伸ばして、坂本の髪に半分ほどうずもれるようになっている天海の頬をするりと撫でてやる土方は、酷く優しいけれど、少し危うい顔をしていると坂本は思う。