書庫5
□家族の肖像 毛玉×2
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新しいものに対して過剰すぎる好奇心を持つ天海は、機械だとか船だとかに興味津々なのだ。一寸目を離した隙にどこかに消えてしまって真っ青になっていたら、半日後に機械油とすすで汚れて戻ってきたこともあった。
何故かその時天海は、一般で売られているようなものより随分手の込んだ、ロボットの玩具を持っていたのだけれど、いまだ入手経路だとかどこで遊んでいたのかは分からない。天海がじいちゃん、としか言わないのだから全ては闇の中だ。
坂本は…よく戻ってくるようになった。
それまでも坂本は二月に一度程度は戻ってきたのだが、天海が生まれてからはもっと頻繁になった。
子どもたちにとっては良いことだとは思うが、仕事のほうは大丈夫なのかどうしても心配になる。陸奥がおるからなんちゃーがやない、と坂本は言うが彼女にまかせきりにしているわけでもあるまい。
坂本とて商売をするためだけに宇宙へとあがったわけではない―――――そう分かっているから、少しだけ土方は罪悪感を覚えるのだ。
プシュ、とスライドドアが空気を吐き出す音がして、土方は思考の淵から現実に還って来る。
途端、うとうとしていた天海の目がぱっちり開いてそれと同時に長身の男が、ドアの向こうからこけつまろびつ、ひどく急いで飛び出してきたところだった。
「トシ!天海!!」
「ちち!」
「あっはっは、よおきたなぁ!!」
土方の膝の上から天海が降りきる前に、雑踏をものともせずにベンチに駆け寄った坂本はいつものように笑って小さな体を抱き上げて頬ずりするのだ。
「ちちいたい!おひげじょりじょりー!」
「そんなに忙しかったのか?」
痛いと言いつつも嬉しそうに笑っている天海に目を細めながら首をかしげると坂本は苦笑する。
「いや、ただの不精ちゃ。この間行った星の時間に合わせちょったがから、今は真夜中じゃ」
トシにもしちゃるー、とヒゲでちくちくとした頬を擦り付けられて土方の方が苦笑する番だ。そのまま降ってきた軽い口付けを受け取ったら今度は天海が騒ぎ出す。