書庫4

□In Paradism 神性の流出
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「何にせよ、アンタはもう寝なせェよ。その間の報告は山南さんにしやすから安心してくだせェ」
「あァ…すまんな、総悟…」
「謝られることじゃありやせんぜ。俺だってトシさんが大事なんだィ」

フン、と小さく鼻を鳴らしている沖田だが、それが照れ隠しだということが分かっているから、近藤は小さく笑ってその頭をくしゃくしゃにかき混ぜた。

まだ昼の時間帯に眠るなんて事は、最近では考えたこともなかった。
障子をすかして弱められた日の光が目蓋をちらちらとくすぐって、近藤は何度も溜息をついては寝返りを繰り返した。
布団に入ってもあまり眠れないのだが、沖田たちを心配させたくない。

近藤は自分の取り得が頑丈さと、前向きな性質だけだということを知っている。トシはそんなことはない、と言ってくれたが、近藤は局長という地位に必要な器用さと言うものや、交渉能力というものが欠けている。
近藤が人よりも多少秀でているというのなら、自分を客観視できるという一点であろう。
トシはそんな近藤を、まるで尊いものを見ているかのように眩しそうに目を細めていつも眺めていたのだ。

トシは今、どうしているのだろう。

机の上に集められたままになっている守り袋は、もう小山のようになっている。
今はそれにトシの無事を願うことしか近藤には出来なかった。いや、無事でなくてもいい。
生きて。どんな形でもいい、生きていてくれるのなら。
それ以上に願うことなど、自分にはおこがましいような気がしていた。
それでも望まずにいられない近藤は、そっと手首に巻かれた小さな紐を撫でて目を閉じる。
かつてトシに贈った、惨劇の場に取り残された紅紐は証拠物件のひとつのはずであったが、とうとう返却はされずに近藤の手首にひっそりと巻かれている。
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