書庫3

□南天(コネタより)
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銀時が死んでから、土方は何も口にしない。
多少の精気の摂取手段である酒も飲まない。言葉数は注意しなければ分からぬが矢張り減っている。彼は化生だから、ヒトの食物などめったなことでは口にしないが、長年「食事量」を極端に押さえ込んできたものだからこれ以上ヒトでいう絶食は危険であった。
土方の肌は青ざめて、白を通り越している。痛々しいほどの透色を山崎は直視することが出来ない。桂と神楽と交代で様子を見てはいるが、土方は外見上ほとんど変わらない格好をして、だが確実に弱っているのだ。優美ながら色めいた微笑を、銀時がそばにいたときは絶やすこともなかったというのに、今ではその朱唇は真っ直ぐに引き結ばれ、時折痛々しく綻ぶ。
取り乱したり泣き叫んだりはしなかったが、その方が良かったと逆に山崎は思う。
これではまるで、死んでいるようなものではないか。

彼は何年もかけて心を固めてきたのかもしれない。
いつか来る日を、受け止める準備をしていたのだろう。
土方は銀時を生き返らせたりすることはなかった。魂だけを引き抜いて、現世にとどめることもしなかった。
土方が、銀時をヒトならざるものにするのではないかと山崎半ば思っていたというのに(そして止める覚悟も受け入れる覚悟もしていたというのに)土方はひとこと、荼毘には伏さないでほしいと言っただけだった。

土方は自らの手で墓穴を掘り、銀時の亡骸を埋葬した。

地面を隆起させることも陥没させることも彼の手では簡単だったはずなのに、彼は一切妖力を使わなかった。
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