書庫1

□お風呂をめぐる騒動編
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ざぱ、とまた湯を掛け体中もこもこになった泡を流してやって、小さな体を抱き上げると膝の上に乗せる。座らせたら溺れてしまうからだ。

「熱くねぇか?こひじ」
「ちょと、だけ」
「我慢しちゃ駄目ですよ、小さい副長」

大人にしてみれば丁度良い温度ではあるが、皮膚の薄い子供には少し熱いらしい。
近藤に合わせて長風呂をしていたら一度のぼせかけたことがある。我慢強いのも一長一短だ。
豪快に山崎は蛇口 を捻って水を足した。因みに一番風呂なのだが、追い炊きも出来ることだしできなかったとしても沖田は許可するだろう。

こひじにメロメロの二人である。


「こひじはとおさまたちのこと大好きだよな」

そのこひとじが懐いている度合いが愛情に比例しないのが悔しい沖田だ。情なら自分たちだって負けないくらいにある、と自負している。ちなみに沖田は桂が自分たちのひょっとして上をいくくらいこひじにメロメロのデロデロのドロドロだということを知らない。

近藤さんとどっちがすき?と意地悪い質問をされ、困るこひじに鼻血が出そうなのは山崎である。

眉尻を八の字にして困っているこひじが可愛い。
大人土方はこういう反応をすることはないのだが、苛める沖田の心情がちょっと理解できそうになってしまった。
やったらただではすまないだろうけれど!

「…じゅんばん、つけなきゃらめ?」

心底困った顔をするこひじに相好を崩すのは沖田も一緒だ。だが、

(喰っちまいてぇなぁ…)

というところにその思考が行くのが山崎との決定的な違いである。現状で実行するのは不可能の上、警察が青少年健全育成法にひっかかるのは体裁が悪いどころの話ではないが。

ああ、でもこれはいいかもしれない。

不穏な案を思いついた沖田はにこりと笑ってじゃあ、と続けた。

「こひじ、俺のことは好きかィ?」
「すきだよ!そうにぃもしゃがるもすきー」

ぱっと顔を上げるとこひじは笑った。しゃがる、のところは無視して一気に機嫌が上昇する沖田である。ちなみにしゃがるは背後で今度こそ鼻血を吹いている。湯船が汚れたら沖田にしばき倒されるので現在両手でガード中だ。

電話での高杉たちとの交渉のときは近藤ととおさま二人、それ万事屋のことしか出なかったが、これでその分は取り戻された。
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