書庫1

□おじちゃんと一緒編
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連れてこられた子供は、土方という男を知っていればいるほど信じられるものではなかった。

まず小さい。
これは子供だから仕方がないとしても、つり気味の大きい目は異人のように淡い色をした虹彩と、夜のように真っ黒な瞳だった。
瞳孔が開いていない土方など、松平は一度も見たことがない。あれは後天的なものだったのかとあやうく感心すらしそうになる。

その子供は近藤の横でソファに埋もれかけている。
近藤には茶が出されていたが、子供の前にはクッキーとココアが出されていた。小さい両手でマグカップをちょこんと傾けているのが微笑ましい。出されたときは近藤と松平を見比べて、食べていいと了解が出てからきちんと手を合わせていた。
子供というものはもっと我儘な生物だと思っていたから、推定三歳でこれだというのも信じられない。山崎と同じような感想を松平も抱いている。

大人土方も、礼儀にはしっかりした男だったけれど。


「トシがこんなになっちまったのは、先に電話した通りなんだけどよ…」
「あァ…子供たァ聞いてたが、こんなになってるとはな…」

大体二歳後半から三歳前半程度。
二十年以上を巻き戻してしまったわけだ。

少し大きいマグカップと必死で格闘している幼児は警戒心が薄いのか、人見知りをしない。
堅気にはどうやっても見えない松平を見ても怯えることもなかった。
松平が直接の上司になって暫く毛を逆立てていた土方とは大違いだ。いや、この子供が土方なのだけれど。

「上の方には伝えておくし苦情も言っておくが、効果があるかは分からねぇぞ」
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