妄想夢話・2

□(43)
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なんか、イイ匂いがする。

たまに、だけどね。



芳香剤とかコロン系とか、制汗剤シュー!とかめっちゃ弱い。くしゃみで済めばマシな方で、ヒドイ時は鼻水ズビズバ。
香りの強いシャンプーも苦手だ。


そんな状態だけど、たまに、ほんっとにたまにイイ匂いが漂ってくることがある。

校内で。



イイ匂いがしたのは、特別教室のある廊下。テニスコート周辺。職員駐車場。
友達に付き合ってテニス部さま覗きに行ったときに気づいたんだよね。
部員なんだろーか。匂いのモト。




「ねー、なんかさー」


クラスのテニス部員、なにやら死んだ魚のような目をしたイケメン(だとアタシは思わない)眼鏡に声をかけた。


「や、イイや」


めんどくさいことになりそうで会話をぶちきる。不審げな顔を返すけど、すまん。
背後から押し寄せる嫉妬と羨望が混ざったよーなオーラに耐えられそうにない。
そそくさと他人顔で教室を出た。





「コエー!女子コエー!」




思わず廊下を全力疾走。
目的地があるわけじゃない。ただなんちゃら親衛隊的なヤツが怖かった、のと同時に笑いが出てきた。



ランニングからスキップに以降したその時ーー



「廊下を走るな!」


叱責の声と同時に、あの、匂い。


「……え゛」
「何をバタバタと走っている。落ち着きがないな」
「えーと、えー…と、先生?」
「何だ?」


そら、廊下走ってたら注意もされるわ。いいんだそれは。それよかコレよこの匂いよ!


「あー、あー…っと、えと、」


「授業が始まるぞ、教室に戻れ」
「………ぅはい」



テンパるアタシを無視で、その人は言った。そらもうビシィッ!って効果音付きで。


「行ってよし!」



数歩歩いて振り返る。んで、聞いてみる。




「先生、どんな香水使ってます?」
「子供は知らなくていい」



間髪入れずに返ってきた返事。ハナで笑わ
れてるような声音。
でも表情は優しかった。



「ケチ〜!」
「廊下を走るなと言っただろう!」



また全力疾走してしまった背中にかかる声。
そうか、世の中には臭くないおっさんも居るのか。そうかそうか。



榊太郎(43)おっさんだけど、イイ。おっさん。
……違った、イイ。先生、かな?
 

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