機動の書庫 二号舎

□うたた寝
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「よし、準備OK。ハロ行くぞ。」
「オデカケ オデカケ」


うたた寝


今日この時間に訪ねる事は伝えていたはずなのに閉ざされた扉。
何か怒らせる事をしたかとロックオンは首筋に手を当て記憶をさぐる。
確かに刹那の反応が可愛く(ティエリアなど惚れた善く眼だと言って呆れている)わざと怒らせる事をしているが、最近は何かをする以前に会える機会がなかく通信onlyで(スメラギさんには私用で回線を使うなと叱れた)構いたくても構えなかった。
「天岩戸(あまのいわと)か。帰ったら余計に怒られるだろうし。まぁ会えないまま帰るなんて真似しないけど。どうするよ相棒」
ポンッとショルダーを叩きハロに尋ねるが、念の為にとスリープモードにしてあるのだから応えがあるわけもない。

「何の用ですか?」
突然、声を掛けられ振り向くと探るような視線を浮かべる青年が立っていた。
「別に対した事じゃないけど・・・・あれ、もしかして俺って不審者扱い?こんな見るからに善良そうなイケメンなのになぁ」
茶化すような声に青年の視線が強くなる。
《不審者扱いされた事がティエリアに知られるとマイスターの自覚がないとか言い出して、営倉に放り込まれるかもな》
「何をしている」
場を和ませる事に失敗し、余計に不信感を煽った事に苦笑し誤解を解こうとした瞬間、聞き慣れたどこか不機嫌な声がエレベーターホールから聞こえた。
「よう、酷いじゃないか来る時間連絡してただろ。締め出し喰らったかと思ったぜ」
「やましい事があるから締め出しの心配をする。大体聞いていた時間より30分早い。文句を言われる筋はない。」
《本気で不機嫌だな。一体どんな地雷踏んだんだ。俺は》
ロックオンと青年の間を割るように進み鍵を開ける刹那の後姿を見つめていると僅かな合図で入室を促される。
「不審者じゃない、ロックオン・ストラトスだ。刹那の身内みたいなもんだな。今後も宜しく、沙慈・クロスロード君」
刹那は思いだしたように振り返り自己紹介をするロックオンを室内に引きずり込んだ。


ロックオンは持ち込んだ食料品等を所定の位置に仕舞いながら刹那の様子をさぐる。
身に覚えはない(はずの)不機嫌さの原因。
折角の2人(+ハロ)の時間を無駄に過ごすのも馬鹿馬鹿しい、解らないなら聞き出すまで。
ロックオンは刹那を抱き上げ部屋唯一の家具であるベットに移動すると膝の上に横抱きにした。
「どうした」
「ドウシタ セツナ ゲンキナイ」
ロックオンが髪を優しく撫でながら尋ねるとハロも床の上から刹那を気遣う。
「別に…」
「別に、じゃないだろう。何かあったのか?久々に会えたのに、お前に元気がないと心配になる。」
俯く刹那の身体を抱きしめその額や頬に唇を寄せる。
「俺は負担か?」
「どうした急に」
「ティエリア・アーデが俺はロックオンに甘え過ぎていると。」
刹那の言葉にロックオンは溜息を付いた。
「ティエリアは俺に《甘やかし過ぎる。刹那の為にならない》と小言を言うぜ。《刹那を何も出来ない子供のままにするつもりか》とね。」
「・・・・・」
「だから言ってやった。刹那を愛しているから甘やかす。甘やかして甘やかして俺が居ないと何も出来ないようにして、離れて行かないようにがんじがらめにしてやるってね。」
唐突な独占欲の宣言に刹那は戸惑いながらロックオンを見上げた。
「何の為に休みの度に餌付けに通って来たと思ってる。ボランティアだと思ってるのか。下心ありに決まってるだろ。」
「ロックオン・・・・」
「まぁ今日は下心は置いといて、抱き枕してやるから少し休めよ。目の下、隈出来てるぞ。」
「平気だ」
「俺が平気じゃない。眠れないなら子守歌でも歌うか。それとも下心全開で眠らせてやろうか」
「ロックオンっ」
急に体制を変えたロックオンにベットに倒され、刹那は慌てて覆いかぶさってくる身体を押し返す。
「冗談だ。」
唇に触れるだけの優しいキスをしてロックオンは刹那の横に身体を倒す。
「俺とハロが居る。此処は安全な場所だ。」
もう一度刹那を抱きしめ言い聞かせる様に耳元に囁く。
「マカセロ セツナ」
「ほら、ハロも言ってるだろう。」
ロックオンは眠りの淵に誘うように一定のリズムで背中を叩く。
「嫌な夢はみない。」
優しく、穏やかに言い聞かせながら。
「お休み、刹那。」
「オヤスミ セツナ」





 

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