機動の書庫 二号舎

□君に幸あれ
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季節は冬、街は賑わうクリスマス。
そんな街の中、少年は居た。



君に幸あれ



時刻は、夜、八時半過ぎ。
アレルヤからのメールで、街の広場にある噴水で待つように言われた刹那。
何が有るのかも言われる事なく、連絡は途絶えた。
仕方ないと、街に出れば人、人、人…。
人込みが苦手な刹那は、一歩引きそうになった。

噴水前に付けば、見渡すかぎりのカップル。
刹那は何故こんな寒い中、街に出ているのだろうと首を傾げる。

「刹那っ!」
「ごめん、遅れた…っ」
「待たせた…」

声のする方を見れば、ロックオン、アレルヤ、ティエリアの三人が走って来た。

「何をそんなに急いで来た」
「時間過ぎてるもん、急ぐよ…」

時計を見れば、既に九時過ぎ。
もうそんなに時間が経ったのかと、刹那は思った。

「…何かあるのか?」
「は?」

乱れた息を整える三人に問えば、ロックオンから間抜けな声。

「刹那、今日何の日かわかる?」
「…?」

アレルヤからの問いに首を傾げれば、ティエリアが溜息を付く。

「今日はクリスマスだ」
「クリスマス…?」
「そーだ。スメラギさんが、マイスターで祝ってこいって」
「…祝う?何を?」

刹那の回答に、三人は頭を抱えた。

「…仕方あるまい。刹那は戦争の中生きて来たんだ。行事に疎くても、生活に支障はない」
「まあな…。…っと、取り敢えずどっか行こうぜ」
「うん、寒いしね」

アレルヤが、刹那の手を引き歩く。

「わ、すっかり冷えちゃったね…暖かいもの食べに行こうか」

無言で頷けば、アレルヤが微笑む。
刹那の心が、少し温かくなった。

適当に店を見付け、中に入れば温かい空気に身体を包まれる。

「ふぅ〜寒かったなぁ」
「今日は冷えている」
「そうだね…なのに待たせちゃってごめんね、刹那。寒かったよね…」
「平気だ、寒さは慣れれば問題ない」
「風邪引くっつうの」

席につき、メニューを見ながら談話する。
刹那は、クリスマスに集まろうと思ったのか不思議に思った。
クリスマスはキリストの宗教行事。
何故、キリストの宗教行事を祝わなければいけないのか解らなかった。

「刹那、何か腑に落ちないって顔してるな?」

ロックオンが、にやにやと笑いながら言った。
刹那も、言い返す。

何故、クリスマスを祝わなければならない、と。

その問いに、アレルヤが吹き出した。

「刹那、クリスマスっていうのはね。皆で生きて来た事を祝うんだよ。今は、そういう習慣は無くなってしまったけど、また、別の習慣があるんだ」
「…?」
「大切な人と過ごす、って事」

アレルヤが、刹那の髪を優しく撫でる。

「刹那は、戦争の中で生きて来て、今はガンダムマイスターとして生活してるでしょ?もしかしたら、クリスマスを知らないんじゃないかなって」
「それを、スメラギさんに言った所、刹那と祝ってこいと駆り出されたんだ。誰かと過ごせる喜びを分かちあえ、と」

 
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