夢★短★夢2

□桜の樹の下で
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時々、不意に人間界を思い出す時がある。
桜とかいう花が咲く時期…
確か、『春』とかアイツが言っていた。


魔界には四季とかいう季節の流れは無い。
しかし何故か、過去にアイツが咲かせた桜だけは、人間界の桜と同時期に、まるで互いが呼応しあってるかのように、その枝に花を咲かせる。
その花を見るたびに、思い出すかつての仲間の顔。


今年もまたその時期がやってきた。
それと同時にまたアイツの顔が俺の脳内にちらつく。
理由はわからない、がその時期にひどく精神状態が不安定になることは確か。
仕事も思うように手につかず、苛々だけが募る。


そんな中、俺は躯から暇を言い渡される。


「人間界に帰れ、能無し」

「何だと?」

「仕事も出来ないようなやつはここにはいらん、とっと俺の前から消えろ」



−−−人間界に帰れ、だと?
俺の居場所はこの腐った肉と血の臭いの混ざった風の吹く世界『魔界』
しかし、仕事が上手いこと運べてないのは確か。
能無しと罵られても反論できない自分もいる。
そんな自分にさらに苛々を覚える。


「ちっ…」


小さく舌打ちをして俺は百足から出て行った。
 
 
気がつけば俺はアイツの家の前にいた。
決して躯に人間界に帰れといわれたからではない。
ただ、足が勝手にここに向かっていた。


−−−−なぜこんなにもアイツの顔を思い出す?


ここに来るのは何年ぶりだろうか。
アイツは今も変わらずに俺を招きいれてくれるだろうか。

鼓動が高鳴る。
手がしっとりと汗で湿る。
心なしか呼吸は上がり、思わず火が出てるのでは?と思うほど顔面が火照る。


−−−−この俺が、柄にも無く緊張か…。


フッと自嘲気味に笑みを漏らすと俺は勢いよくその窓を開ける。

俺の疑問の答えを知ってるのは、俺の脳内で笑顔をこぼすお前のような気がする。




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