Novel

□月夜
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真っ暗な闇の中にぽつんと一滴の水滴が落ちる


ひとつ



またひとつ



水滴のつくりだす波紋が微かに共震しているかのように何かを呼ぶ。




誰か私を呼んでいるのか?



秋雨はふと目を覚ました。部屋の中はまだ暗い。
窓からは満月の光りが差し込んでいる。


(…夢か?)


目を閉じて耳を済ます。
あたりは物音ひとつしないほど静かだ。
なにも聞こえない。

だが秋雨の心の奥に何かが自分を呼んでいるのを感じる。
とても小さな悲しい音。

秋雨はその何かに誘われるように部屋をでた。


自然に足が向かった先は梁山泊の庭であった。


庭には誰もいない。皆は寝ている時間だ。
秋の夜の空気は冷たく肌をなでる。

ふと屋根の上に気配を感じて見上げると月を見上げいる人物がいる。

しぐれであった。


月明かりに照らされているしぐれは膝を抱えただ月を見ているだけである。

だが秋雨を呼ぶ声なき音はその場所から聞こえてくるのであった。



秋雨は静かに屋根にのぼりしぐれのところに近づいた。




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