Novel
□陽のあたる場所(完)
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秋雨は一人部屋の中で考えていた。
果たして自分はどうしたらいいのだろうか。
しぐれとはこの梁山泊にいる限りは一緒にいることはできるであろう。
なまじ一歩進んだとしてもそれが壊れた時ここで今までどおり生活する事ができるのだろうか。
それに自分はしぐれの父親を…
なによりしぐれは望んでいるのだろうか。
自分と先に進む事を。
頭の中をいろいろな思いがぐるぐる回る。
そこに逆鬼が言った言葉を思いだす。
『簡単な事なんだよ』
(私は考えすぎるのかな…)
そんな事を考えていた時部屋の前に気配を感じた。
「秋雨くん。いいかな」
長老の声がした。
すぐに秋雨は扉を開き長老を部屋に通す。
「どうしたのですか?」
「なに、秋雨くんがどうしてるかなと思って」
「なにもしてないですよ」
「それはいかんな」
長老は長いあごひげを撫でながらうんうんとうなづいた。
「長老…?」
「なあ、秋雨くん。ここにいる皆は家族じゃ。でも本物の家族もいいもんじゃよ」
「それはどういう…」
長老は秋雨の言葉を遮るように首を振り肩をポンとたたくとホッホッと笑いながら部屋を出ていってしまった。
(長老まで…)
秋雨は頭を掻きながらため息をついた。
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